ふたつの塔の家
住宅
松本市
2000年
RC造・混構造, 薪ストーブ, 吹抜け, 受賞作品
第5回長野県建築文化賞/優秀賞
<テーマは“TWIN”>
ふたつの世帯(機能)、ふたつの塔(外観)、ふたつの世代(思い出の継承)。
二世帯の住まいという内包する機能を、外観的にもふたつの塔で表現した。
親世帯は1階全域と西棟の2・3階、子世帯は東棟の2・3階を使う。
<つかず離れず、あいまいにつながっている、ふたつの世帯>
プランの構成は、つかず離れずの距離感を平面だけでなく、視線や気配といった感覚から空間的にとらえていきたい。またそれぞれの家族構成は、時間の経過と共に変動する。
そこで住空間が固定されていると不都合が生じる。その時々に要求に合わせて工夫のできる可変的な空間の構成・つながりが必要である。
地面に接する庭部分を親世帯が使い、子世帯は「切り取られた外部」を擁することによって、それぞれ自然と切り離されることなく独立性を保っている。
ふたつの世帯の領域区分がプランニングの骨格であり、1階の庭に開かれた領域と2・3階のプライヴェートな領域との重なり具合がポイントであった。プラン的には、1階部分は南面居室とピロティー・物置、2・3階部分は直方体の箱を三つ割にして居室と居室の間に「重なり合う段状テラス」を挟みこむという、シンプルで合理的な構成である。
<外部空間の共有>
世帯をつくる両者が独立性の高い相互関係を保ちながら、同時に曖昧な共同の場をもつことを通じて、そこが共同生活の意識の核となる場としての役割を果たすと考えた。
今回の計画では、「2・3階の重なり合う段状テラス」、「1階の玄関前の外部空間」、「子世帯のメインフロアーが2階にあることを示唆する外階段」が交歓の場である。
<視覚的広がり/奥行き感>
1階居室~デッキ~庭のつながり・2階テラス・そこから3階テラスへ至る外階段・親世帯玄関前のピロティー・子世帯の玄関に至る外階段など、内外の生活風景や眺望に対応させたそれぞれの場所の“視覚的広がり/奥行き感”が特徴になっている。